Let's  cook  Thailand

路線バスの乗り方指南 Part3

6月26日・朝8:00過ぎ、突然「ガタガタガタ!! ブスン!!」と尋常ではない揺れを引き起こして、私が通学途中に乗っていたバスがエンストした。バンコクでも交通量が最も激しい通りの一つ、スクムビット通り、しかも3車線道路のまさにド真ん中(Soi 55・トンロー付近)である。

バンコクには「Part2」で載せたように本当に沢山の市バスが走っている。バスの種類も多種多様で運賃も車体もまさにピンきり。私は長距離の移動でもない限り、基本的に運賃の安いバスで移動をしている。運賃の安いバス=ノーエアコン(バスによっては扇風機も無し)で車体はスーパーオンボロ。超長寿のバスもバンコクではかなりの数が生息している。
エンストしたバスもそんなバス。「38番のノーエアコンバス」(←写真)であった。「38番」とはそれぞれの路線につけられている番号の一つで、この路線沿線で生活をしている人は、この番号のバスが数ある市バスの中でも凄いバスであることをだいたい知っている。始発点はバンコク市郊外の遥か北。タイでも貧しい北部地域から中央へ出稼ぎに来た人たちがこのバスを運転をしていることが多いらしく、とりあえず運転が荒い。他の番号の市バスも大概運転は荒いが、この38番は私が感じるところ、"一歩先行く''荒さである。バスのドアは爆走中であろうと殆どの車両で全開。開閉機能が壊れていて、ロープで固定されているものは(→写真)、ドカ雨が降ろうと超満員であろうとドアは閉まらない。このようなバスのドアの付近に立ち乗りする時はしっかりどこかに捕まっていないとかなり危険であり、マジで命がけの乗車である。

さてさて例のスクムビットのド真ん中でエンストしたバスであるが、直ぐに復活すると思いきや、さすが38番、復活の気配が全く無い。茶色グラデーションの怪しいサングラスをかけた運転手がガチャガチャと凄い音を立てて何やらやっている。ところが復活せず、運転手の動きが止まり、どうやらダメなようである事が私にも判った。すると突然、料金を回収する為に乗っている女性車掌が大声で何か叫んだ。「★%♪@▲ф○£Θ!!」。その途端バスに乗っていた男性が次々とバスを降りていく… てっきり皆バスを捨てて、別のバスに乗り換えるのかと思いきや、なーんと一斉にバスを押し始めた。「こりゃいかん!」と私も慌ててバスを降り、タイ人と一緒に朝っぱらからバスを力いっぱい押した。
10〜20m位押した所でなんとかエンジンは復活し、皆、何事も無かったように再びバスに乗り込み、またいつも通りのように爆走し始めた。
右写真はそのバスの後ろを降車後に撮影したもの。排気ガスで汚れたバスの車体に、無数の手跡が残っている。どうやらこのバスは洗車すらされていなかった。

38番に関しては色々な伝説を耳にする。知人に聞いた話であるが、エンストもさることながら、なんと市バスのくせに走行中にガス欠を引き起こした事があるそうで、乗客皆で近くのガソリンスタンドまで押した事があるという逸話が…  これを聞いたら、「あー、エンストで良かった」と思ってしまった。
さすがにこれは稀なケースではあると思うが(?)、他にも走行中、バス停でも渋滞でもないのに突然停車してしばらく動かない事はよくある。或る停車時には、何か有ったのかと思って前を見ると運転手がいない!!。 これを書いている今日(6/28)も実は他の路線のバスに乗っている時に有ったのだが、ガソリンスタンドの前に客を乗せたバスを停めて、運転手がトイレに行っているのである。ま、渋滞が激しい為、始点から終点までの運転時間が長時間にわたる事があることを考慮すると、これは許してあげてもいいとは思うが、それ以外の理由で停車する時も度々ある。
この理由で止まったのは私が今まで乗った市バスでは今までで「38番」だけであるが、なんと、その理由は車掌が買物をする為。私の家のあるオンヌットから1km程離れている『プラカノン』という所にはスクムビット通りへ面した歩道に所狭しと市場がひしめき合っている場所があり、ここでたまにあの「38番」はバス停でもないのに停車する事がある。このとき車掌が車内にいなければ間違いなく「買物」である。歩道にある市場に目をやれば、さほど急ぐ様子もなく買物をしている車掌がいる。だいたい買っているものはフルーツ等、車内で間食する為のものと思われるものばかり。 
ここはタイ、当然乗客の誰も怒るどころか文句を言う人はいない。こんな事で不愉快感を示した所で意味の無い事なので、最近は私もさほど気にしていない。いつも隣にいるタイ人乗客と一緒にニャッと笑ってお終い。

ちなみにハプニングなどがあるのは何も「38番」やオンボロバスだけではないのであしからず。私がバスを押した26日の夕方、別の場所で最新の2両連結エアコンバスが故障して止まって警察に牽引されているのを見かけた。

バンコクで市バスに乗るときは日本では考えられない様な事が起ころうともさほど驚かずにいる事がベターである。なんでもあり、なんでも起こりえる市バスは、タイらしくて楽しい乗り物である。もしタイに旅行等で来ることがある際は、ただの観光地巡りだけは絶対に面白くない。ノーエアコンのバスに乗る(お勧めは「38番」)、トゥクトゥク(料金交渉制三輪タクシー)に乗る前に運転手と運賃交渉バトルをする、そして道端のおいしい屋台でタイ料理を食らう。 
  どうですか?なかなか楽しいですよー。

トップへ戻る